インフルエンザのヘルプナビ

監修:日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班 リサーチディレクター
池松 秀之先生

時系列で学ぶインフルエンザ治療編

トピックス
  1. インフルエンザの診断とは?

  2. 検査のための材料を採取する方法は?

  3. インフルエンザの治療とは?

  4. 抗インフルエンザ薬とは?

インフルエンザの診断とは?

医師の診察と簡単な検査により
診断されます

「インフルエンザかも?」と医療機関を受診すると、医師の問診・診察のほかにインフルエンザウイルスに感染しているかを判定する検査(インフルエンザ迅速抗原検出キット)を行うことがあります。(保険適用)
インフルエンザの診断は症状のみでは必ずしも容易ではなく、検査の併用は有用な方法です。検査を受けてから結果がわかるまでの時間は、使われる検査キットによって異なりますが、概ね5分です。以前は、発症したばかりだとウイルス量が少なく、検査を受けても陰性(インフルエンザではない)と出てしまうといわれていましたが、最近は検査キットの精度が向上しており、発症して6時間以内に検査を受けてもインフルエンザ陽性と診断できる場合が多くなっています1)

※「インフルエンザ迅速抗原検出キット」は『体外診断用医薬品』という医薬品で医療機関でのみ使用され、市販されていません。検査を受けるには医療機関の受診が必要です。

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インフルエンザ迅速抗原検出キットのしくみとは?

インフルエンザ迅速抗原検出キットのしくみは、「抗原抗体反応」を利用した免疫法によるものです。判定部に、インフルエンザA型とB型それぞれのウイルスに対する抗体を含む試薬がライン状に塗布されています。検体に含まれるインフルエンザの抗原が、判定部の抗体と結合すると、試薬の発色成分によって有色のラインがあらわれます2)

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検査のための材料を
採取する方法は?

検査の材料(検体)として、患者さんの鼻やのどの粘液を綿棒のようなもの(スワブ)でぬぐった液や、鼻水(吸引した液、鼻かみ液)が用いられます。

※使われる検査キットによって検体採取方法の保険適用範囲が異なります。

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インフルエンザの治療とは?

インフルエンザと診断された際の、主な治療法は抗インフルエンザ薬の使用です。発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用すると、インフルエンザウイルスの増殖が抑えられるため、インフルエンザの各症状(咳、のどの痛み、頭痛、鼻づまり、熱っぽさ又は悪寒、筋肉又は関節の痛み、並びに疲労感)の改善を早めたり、体外に排泄するウイルスの量を減らす効果があります。また、症状を和らげる治療として高熱には解熱剤(アセトアミノフェンなど)、咳には鎮咳薬(咳どめ)、たんがひどい場合は去痰薬(たんを切れやすくする)などが使われることがあります。 インフルエンザはウイルス感染症なので、細菌感染症に使う「抗菌薬」は効きません。しかし、肺炎や気管支炎など細菌感染症の併発が疑われる場合には、抗菌薬が処方されることがあります3)。医療機関では、重症度や発症からの時間、患者さんの年齢などをふまえて、薬での治療を行うかどうかや、適切な薬剤が選択されます。

抗インフルエンザ薬とは?

抗インフルエンザ薬には、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する作用があり、作用メカニズムの違いによりM2蛋白阻害薬、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬、RNAポリメラーゼ阻害薬、ノイラミニダーゼ阻害薬に分けられます。現在、日本で主に使用されているのはキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬とノイラミニダーゼ阻害薬です。

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投与日数は1日や5日、剤形は経口薬、吸入薬、注射薬とさまざまです。

※「抗インフルエンザ薬」は薬局などで市販されていません。医療機関で医師による処方が必要な薬剤です。

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日本で主に使用されている抗インフルエンザ薬の作用メカニズムとは?

インフルエンザウイルスは、宿主(動物)の細胞のしくみを巧みに利用しながら、感染と増殖を繰り返しています。抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスが宿主の細胞内で増殖するいずれかの過程を阻害して、ウイルスの増殖を抑制しています。

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  1. ① インフルエンザウイルスは、宿主(動物)の細胞核内で新しいウイルス(子孫ウイルス)の部品となるRNAとコピーされた伝令RNAからタンパク質を生成します。キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬は、そのタンパク質を生成する際に関わる「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」という酵素を阻害し、インフルエンザウイルスが細胞内で増えるのを防ぎます。
  2. ② 複製されたインフルエンザの子孫ウイルスは、細胞から出ていくときに自身の持つ「はさみ」(ノイラミニダーゼ)を使って、自身と細胞を切り離します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、自身を細胞から切り離す際に関わる「ノイラミニダーゼ」という酵素を阻害し、子孫ウイルスが細胞から出ていくのを防ぎます。
参考文献

1)日本臨床内科医会:インフルエンザ診療マニュアル 2019-2020シーズン版(第14版), p.10

2)松井 秀仁 ほか:化学と教育, 2010, 58(11), 506-509

3)厚生労働省:インフルエンザQ&A, Q11,16 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html