インフルエンザのヘルプナビ

監修:日本臨床内科医会 インフルエンザ研究班 リサーチディレクター
池松 秀之先生

時系列で学ぶインフルエンザ発症編

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ちょっとかぜっぽい?でも、目下インフルエンザが流行中。もしかしたら私も…
そんなときはどうしたらいいの?

トピックス
  1. インフルエンザとは?

  2. 「かぜ」と「インフルエンザ」の違いは?

  3. 重症化しやすい人ってどんな人?

  4. インフルエンザの合併症とは?

  5. 異常言動、万が一の事故を防ぐために

インフルエンザとは?

インフルエンザとはインフルエンザウイルスによる気道感染症で、症状としてはかぜに似ているものの、一般的なかぜ(普通感冒)に比べて症状が重くなりやすいことが特徴です。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型およびD型があり、ヒトに流行を起こし、臨床的に問題となるのはA型とB型インフルエンザウイルスです。その流行は冬季にあらわれ、日本では毎年約1,000万人1)が罹患すると推定されます。インフルエンザにかかると、咳やのどの痛みだけでなく、高熱や全身のだるさ、食欲不振といった全身症状が強く、しばしば頭痛や関節痛、筋肉痛などの症状も伴います。多くは自然に軽快しますが、合併症として気管支炎や肺炎、中耳炎、脳症がみられることもあります。場合によっては重症化や最悪の場合いのちを失うこともあります。重症化を防ぐためにも早期治療が大切なポイントです。

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「かぜ」と「インフルエンザ」の違いは?

かぜとインフルエンザの⾒分け⽅

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することで発病します。 一方、かぜもさまざまなウイルスなどの病原体が原因で、鼻汁、咳、のどの痛みなどの症状はインフルエンザと共通しています。でも、もし発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、だるさなど全身の症状が急速にあらわれたら、インフルエンザの可能性があります2)
ひとつの目安として、「朝は元気だったのに、昼ごろから急に熱が出て全身症状があらわれた」といった場合は、インフルエンザを疑った方がよいでしょう。 なお、近年は「インフルエンザらしくないインフルエンザ」も増えてきています。それほど高熱にもならず、軽症だったのに検査を受けたらインフルエンザ陽性だった、という例も少なくありません。高齢の方は微熱でもインフルエンザであることがまれではないと報告されています3)
もし、インフルエンザが疑われる症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。また、周りの人にうつさないよう
咳エチケットなどを心がけましょう。

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※1 悪寒、頭痛、関節痛・筋肉痛、全身のだるさ(倦怠感)など

※2 のどの痛み、鼻症状(鼻汁、鼻づまり)など

重症化しやすい人ってどんな人?

次のような方はインフルエンザをきっかけに合併症などを引き起こすリスクがあり、重症化することがあります。日常生活の中での手洗いや、ワクチン接種など予防意識を高く持ち、インフルエンザが疑われる場合は特に早期に受診して診断・治療を受けることが大切です。

インフルエンザが重症化しやすい人5)

インフルエンザは、乳幼児や高齢者をはじめ、以下のような方は合併症を引き起こしたり、重症化することがあります。

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インフルエンザの合併症とは?

インフルエンザの多くは自然に軽快しますが、まれに重い合併症を引き起こすことがあります。高齢者や基礎疾患を持つ免疫不全の方では細菌性の二次性肺炎を引き起こすことで重症化する報告や、小児ではインフルエンザ脳症と呼ばれる重度の中枢神経症状を呈する急性脳症を発症する報告があります6)

インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症のハッキリとした原因は解明されていませんが、インフルエンザウイルスが直接脳内に入り込んで起こしているわけではなく、過剰な免疫反応が原因で脳がむくむ(脳浮腫)と考えられています。インフルエンザ脳症には、早期に死亡に至る重症例から脳症かどうかの判断が難しい軽症例までさまざまな病態があります7)。症状の出かたにも個人差があり、確定診断が難しい場合も多々あります。初めに出る神経症状には、意識障害、けいれん、異常言動・行動などです。

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インフルエンザ脳症の異常言動・行動の例
(インフルエンザ脳症患者家族の会「小さないのち」アンケート調査より)7)

  • ① 両親がわからない、いない人がいるという(人を正しく認識できない)。
  • ② 自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない。
  • ③ アニメのキャラクター・象・ライオンなどが見える、など幻視・幻覚的訴えをする。
  • ④ 意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない。
  • ⑤ おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情。
  • ⑥ 急に怒り出す、泣き出す、大声で歌い出す。
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また、国立感染症研究所のデータによると、2018/19シーズンのインフルエンザ脳症の報告数は223例(2019年17週まで)で、年齢別では10歳未満の割合が高く69%を占めていました。一方、60歳以上の割合は9%でした8)

インフルエンザ肺炎とは?

インフルエンザの感染をきっかけに肺炎を起こすことがあります。
肺炎の原因には、インフルエンザウイルス感染による肺炎(原発性インフルエンザウイルス肺炎)と、インフルエンザウイルスと細菌が混在した肺炎(ウイルス細菌混合性肺炎)、そしてインフルエンザ治癒(軽快)後に発症する細菌性肺炎(二次性細菌性肺炎)の3つがあります9)

【原発性インフルエンザウイルス肺炎】
頻度はあまり多くありませんが、インフルエンザ発症後3日以内に急速に進行して呼吸不全となります。発熱、呼吸困難、皮膚や粘膜などが青紫色になる状態(チアノーゼ)がみられ、血液が混ざった痰がみられることもあります。心肺疾患を持つ人や妊婦に多く、若年者でも発症します。

【ウイルス細菌混合性肺炎】
インフルエンザの経過中に細菌性肺炎を併発するもので、発熱や咳が長引き、色のついた痰が出たりします。65歳以上の高齢者などインフルエンザが重症化しやすい人が起こしやすいといわれています。

【二次性細菌性肺炎】
インフルエンザの症状が一旦軽くなり、その数日後に細菌性肺炎が起こります。発熱、咳、色のついた痰などがみられます。こちらも65歳以上の高齢者などインフルエンザが重症化しやすい人が起こしやすいといわれています。

細菌の二次感染はなぜ起こるの?

インフルエンザウイルスによって気道に炎症が起こると、気道表面の細胞が壊れ細菌が肺に侵入しやすくなります。原因菌としては「肺炎球菌」や「黄色ブドウ球菌」、「インフルエンザ菌(名前が一緒ですがインフルエンザウイルスとはまったく別のものです)」が多くみられます9)

異常言動、万が一の事故を防ぐために

抗インフルエンザ薬を服用しているかどうかや、その種類にかかわらず、インフルエンザにかかったときは、転落などの大きな事故を起こすおそれのある異常言動(「突然走り出す」、「おびえてパニック状態になる」、「わめく、泣き止まない」など)があらわれることがあります。小児・未成年の患者さんでみられることが多く、注意が必要です。

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異常言動による転落などの万が一の事故を防止するために、次のことに注意してください。

  • ① 異常言動があらわれるおそれがあること
  • ② 自宅で療養する場合、少なくとも発熱から2日間、転落などの事故を予防するための対策を取ること

万が一の転落などの事故を防止するため、発熱から少なくとも2日間は、寝ている間でも、特に小児・未成年の患者さんが簡単に自宅の外に飛び出せないようにするために、例えば、次のような対策を取ってください。

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参考文献

1)厚生労働省:季節性インフルエンザり患者数の推計方法の見直しについて https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/flu/levelmap/suikei181207.pdf

2)厚生労働省:インフルエンザQ&A, Q1 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

3)日本臨床内科医会:インフルエンザ診療マニュアル 2019-2020シーズン版(第14版), pp.5-7

4)河合 直樹編:よくわかるインフルエンザのすべて, 2013, p18, 医薬ジャーナル社, 東京

5)CDC, “People at High Risk For Flu Complications” (August 27, 2018) https://www.cdc.gov/flu/highrisk/index.htm

6)Morishima T, et al., Clin Infect Dis 2002; 35: 512-517

7)厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班:インフルエンザ脳症ガイドライン 改訂版,2009

8)国立感染症研究所:今冬のインフルエンザについて(2018/19シーズン)

9)成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン第2版,2017,p.17