インフルエンザのヘルプナビ

監修:北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター
特別招聘教授 喜田 宏先生

インフルエンザウイルスの基礎知識鳥インフルエンザウイルス
とは?

トピックス
  1. 鳥インフルエンザウイルスとは?

  2. 高病原性鳥インフルエンザウイルスが生まれるメカニズム

  3. ニワトリに対する病原性を左右するものとは?

  4. 日本で鳥インフルエンザは発生しているの?

鳥インフルエンザウイルスとは?

インフルエンザウイルスは、様々な動物に感染します。中でも家禽(かきん)に感染するA型インフルエンザウイルスを「鳥インフルエンザウイルス」と呼びます。また、鳥インフルエンザウイルスはニワトリに対する病原性の違いにより低病原性と高病原性に分類されます。
鳥インフルエンザウイルスは、通常、ヒトには感染しませんが、感染したニワトリや、その糞便、死体、臓器などに濃厚に接触した場合にきわめて稀にヒトに感染することがあります。中国、エジプト、インドネシアとベトナムほかでH5N1、H7N7およびH7N9鳥インフルエンザウイルスに感染したヒトの例が報告されています。一部の家族内感染を除き、ヒトからヒトへの感染は認められていません1)

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高病原性鳥インフルエンザウイルスが生まれるメカニズム

鳥インフルエンザウイルスは、自然界でカモの腸に感染、増殖し、糞便とともに排泄されます。自然宿主であるカモに対して病原性を示すことなく、共生しています。そのインフルエンザウイルスが、アヒルやガチョウなどの水生家禽に水を介して感染し、生鳥市場などでウズラなどキジ科の陸生家禽を介して、ニワトリに感染します。H5またはH7亜型のHAを持つインフルエンザウイルスがニワトリの間で少なくとも6ヵ月以上にわたり感染を繰り返すと、ニワトリの全身で増殖する「高病原性鳥インフルエンザウイルス」が生まれることがあります。

カモなどの渡り鳥は「インフルエンザウイルスの運び屋」なのじゃ。ニワトリを飼う養鶏場では、渡り鳥や渡り鳥の糞便には十分に注意する必要があるのじゃ。

ニワトリに対する病原性を左右するものとは?

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低病原性と高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性の違いは、ウイルスが持つヘマグルチニン(HA)に起因します。
インフルエンザウイルスは体内に入ると、ウイルスの表面にあるHAが、宿主(動物)の細胞表面にある受容体(シアル酸糖鎖レセプター)に吸着し、細胞に侵入する足がかりにします。その後、インフルエンザウイルスは細胞の貪食作用(エンドサイトーシス)により、細胞内のエンドソームに包まれます。次に、HA2のN末端がインフルエンザウイルスの膜(エンベロープ)とエンドソームの膜を融合させます。この膜融合を起こすためには、HAがHA1とHA2に分かれて(開裂して)いる必要があります。
低病原性鳥インフルエンザウイルスは、そのHAが、細胞表面のレセプターに結合した後、エンドソームに取り込まれます。次いでインフルエンザウイルスエンベロープとエンドソーム膜を融合させて、遺伝子が細胞質に侵入します。HAはHA1とHA2に開裂していないと、膜融合を起こすことができません。低病原性鳥インフルエンザウイルスのHAは、呼吸器や腸管に局在するトリプシン様のタンパク分解酵素によってのみ開裂するため、増殖部位も呼吸器と腸管に限られます。そのため、感染したニワトリは症状を示さない、もしくは軽い呼吸器症状を示す場合があります2)

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一方、高病原性鳥インフルエンザウイルスのHAは、宿主(動物)の全身組織の細胞に存在するタンパク分解酵素(フリン、PC6)によって開裂活性化するので、インフルエンザウイルスが全身の臓器で増殖します。その結果、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染したニワトリは数日以内に死亡します2)

日本で鳥インフルエンザは発生しているの?

日本にも、2004年、2007年、2010年~2011年、2014年~2015年3)に、高病原性鳥インフルエンザウイルスが侵入しました。的確な家畜衛生防疫方針と全国の家畜保健衛生所の連携によりその被害を当該農場のみに止めることができています。鳥インフルエンザ対策の基本は、家禽の感染を早期に発見し、感染家禽を淘汰することで、被害を最小限に抑えることです。

鳥インフルエンザはアジア、中東、ヨーロッパおよびアフリカなど62ヵ国で3)発生しているのじゃ。多くの国では、H5またはH7鳥インフルエンザウイルスが家禽から検出された際、当該農場の鳥を淘汰し、清浄化を図るのじゃ。しかしながら、これが徹底されないために、世界各地で高病原性鳥インフルエンザウイルスが家禽に大きな被害を及ぼしているのじゃ。

参考文献

1)厚生労働省:鳥インフルエンザに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/qa.html

2)農林水産省:鳥インフルエンザについて知りたい方へ
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/know.html

3)木村 晢, 喜田 宏:人獣共通感染症 改訂3版, pp.74-75, 2016